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サーフィンを仕事にするということ(1)プロサーファー兼サーフショップオーナー・一楽弘徳 氏

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10,131 views 2019-3-20 UPDATE

サーフィンを仕事にしている人には、どんな喜びや苦労があるのでしょうか。
サーフィンに限らず、「好きなこと」を仕事にしている人は世の中にそう多くありません。
趣味の範疇を越え「仕事」とすると、夢や綺麗事だけでは語れない、泥臭い話もあるでしょう。

「サーフィン=好きなことを仕事にしている人」にだけ見える、夢も苦味も含んだリアルな景色について探る連載企画。

今回は、プロサーファーでありサーフショップオーナーでもある一楽弘徳氏に、「サーフィンを仕事にするということ」について話を伺いました。

カバー画像:Instaglam @hiro_ichiraku

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サーフィンに関する仕事内容とは?

四国の右下、高知県東洋町に位置する生見海岸をホームポイントとするプロサーファー・一楽弘徳(いちらくひろのり)氏。
生見海岸の目の前にある“SURFSHOP MORE”を経営するサーフショップオーナーでもあります。
一楽氏の仕事内容について詳しく話を伺いました。

メーカーとのコラボやライダー

現在はプロサーファーとしての試合出場からは距離を置いている一楽氏。
しかし、小波からチューブまでしなやかに乗りこなすライディングやサーフスタイルに共鳴するファンは多く、サーフボードのコラボモデル開発や、ウェットスーツメーカーのライダーなどをつとめています。
2011年からライダーをつとめるMARVY WETSUITSでは、新作ウェットスーツ開発に際してのフィードバックや、毎シーズンのカタログ撮影のモデルをしています。
メーカーからは、ウェットスーツなどの物品が提供されます。

<(左)MARVY2019SSカタログ(右)2018カタログ表紙は実際の交差点で撮影>

また辻裕次郎プロや安室丈プロなど、四国が輩出したプロサーファー達とセッションする際には、フォトグラファー達が訪れ、撮影された映像がメディアに掲載されることもあります。

▼第2弾:サーフィンカメラマンの仕事についてはこちら

サーフィンを仕事にするということ(2)カメラマン・吉永智尋 氏

#サーフィン

SURFSHOP MOREの経営

生見海岸の目の前にある“SURFSHOP MORE”。
サーフボードやウェットスーツなどの販売のほか、初心者から中・上級者のステップアップまで対応したサーフィンスクールを実施しています。
多くのサーファーが訪れる夏の繁忙期には、たこ焼き・うどん・スパムおにぎり・かき氷などの軽食を提供するカフェもオープンします。

<(左)SURFSHOP MOREの店内(右)一楽氏のサーフィンスクール>

生見海岸に関する相談役

一楽氏の父・良二氏(故人)は、生見海岸をサーフィンビーチとして整備した、四国のレジェンドサーファーでした。
亡き父の遺志を継ぎ、今後の生見海岸を見守っていくのが一楽氏の使命ともいえます。

<(左)生見海岸(右)故・一楽良二氏>
Instaglam @surfshop_more @hiro_ichiraku

たとえば生見海岸で大会が開催される時など、一楽氏のもとには各団体から日程や波のコンディションに関して、相談が持ちかけられることが多くあります。
なにか報酬が発生する仕事ではありませんが、生見海岸の見守り役・相談役のような立場を担っています。

サーフィンを仕事にしている割合は?

一楽氏の仕事を100%としたときに、そのうち「サーフィンを仕事にしている」割合を伺いました。

一楽氏の中で、サーフィンを仕事にしている割合は80%。
主な仕事はサーフショップの経営です。
一楽氏曰く「理想はサーフィンに関する仕事が100%」だといいますが、サーフィン人口が減る冬は、地元特産の農産物の出荷などの仕事もおこなっています。

サーフィンを仕事に選んだ理由とは?

一楽氏がサーフィンを仕事に選んだ理由について伺いました。
なぜプロサーファーを目指したのか?
そして現在はサーフショップの経営に重きを置くに至ったきっかけとは?

プロを目指した理由と、プロとして感じた壁

レジェンドサーファーを父に持ち、実家はサーフショップ。
そんな恵まれた環境のもと、幼少期からサーフィンの英才教育を受けてきたのかと思いきや、意外にも一楽氏がサーフィンにのめり込んだのは中学2年生の時。
それまではずっとバスケ少年で、むしろ海の深いところが怖かったのだそうです。

周りの友人の影響を受けてサーフィンを始めるようになると、めきめきと頭角をあらわした一楽氏。
初めは「国内のアマチュア大会で表彰台にのぼる」ことを目標に、
次は「世界を舞台に日本代表になってみたい」、
そうして目の前にある目標をひとつひとつクリアしていった先に、自然と見えてきたのが「プロになる」という目標でした。
そうして2003年、19歳の時、ホーム生見海岸でおこなわれた大会で見事トライアルに合格し、プロサーファーとなったのでした。

▼プロサーファーは狭き門!プロサーファーになるための試験とは?

プロになるには試験がある!プロサーファーを目指すには

#サーフィンのコラム

しかし、一楽氏がその後感じたのは、プロサーファーとしての壁でした。
それまで、目の前の目標をひとつひとつクリアすることでプロにのぼり詰めた一楽氏ですが、その先に「プロの中で一番になる」というまでの目標を持てなかったそうです。
プロの試合では以前より勝つことが難しくなり、プロサーファーとしての仕事に面白さを感じられなくなってしまった時期もあったといいます。

SURFSHOP MOREの経営に携わるようになった理由

<SURFSHOP MOREから生見海岸はすぐそこ>

一楽氏がプロになって2年がたった21歳のとき、父の良二氏が他界しました。
それでも、父が経営していた“SURFSHOP MORE”をすぐに継ぐ気にはなれませんでした。
まだまだプロサーファーとしての道をメインに歩みたいと、ハワイの試合などにも積極的に出場していました。

しかし26歳のときに祖父も他界し、それまで母やプロボディボーダーの姉と協力して営んでいた“SURFSHOP MORE”を今後どうしていくのか、という岐路に立たされました。

それまで、店の経営よりも「自分が波に乗りたい」という気持ちの方が強かった一楽氏ですが、その頃から“SURFSHOP MORE”の経営に深く携わるようになっていきました。

サーフィンを仕事にする上での「苦労」と「喜び」とは?

プロサーファーやサーフショップオーナーとして、「サーフィン」を仕事にするうえで感じる「苦労」や「喜び」について伺いました。

「苦労」を感じること

■ 自然に左右されること

サーフィンは自然相手のスポーツであるため、サーフィンに関する仕事も、必然的に自然に左右されます。
たとえば冬は、比較的コンスタントに波が立つと言われる生見海岸でもフラットな日が多くなり、サーフィンに訪れる人が減ってしまいます。
またハイシーズンの夏場でも、台風がきて海がクローズとなれば、どれだけスクールの予約が埋まっていてもキャンセルせざるを得ません。
天候や季節、波などの自然によって左右される不安定さが、苦労を感じる点だといいます。

■ プロとしてやっていくことの厳しさ

プロサーファーとしては、「プロになってから」と「プロをやめたあと」に苦労のポイントがあるといいます。
サーフィンはまだマイナースポーツな側面があり、プロになっても大会の優勝賞金やスポンサー契約などが少ないのが実情です。
また選手生命も長いとは言い難いため、プロをやめたあとの仕事や人生についてもしっかり考えておく必要があります。

「喜び」を感じること

■ サーフィンがしやすい環境にあること

サーフィンがしやすい環境にある仕事、それは実にシンプルで大きなメリットです。
「波がある」と聞けば店の常連さんや、旧知の仲間とサーフィンに行きやすい環境がととのっています。

■ お客さんがサーフィンを楽しんでいる顔を見ること

店でボードを買ってくれたお客さんがいい波に乗っていたり、スクールを受けに来たお客さんが波に乗れて楽しそうにしているのを見ると嬉しくなる、と一楽氏は言います。
これは最近感じ始めた喜びだそう。
それまではまだ、「プロとしてバリバリやりたい」「自分が波に乗りたい」という気持ちの方が強かったといいますが、「サーフィンを教える側の楽しさ」というものが最近になりわかってきたといいます。

仕事をするうえで「大切に」していること、「努力」していること

一楽氏がサーフィンの仕事をするうえで「大切」にしているのは、
“SURFSHOP MORE”のチーム員(常連さん)を増やしていくこと、
自分のサーフィンの経験を伝えながら、サーフィンを楽しんで頑張る人を増やしていくことです。

そのために「努力」しているのは、
ただ物を売るだけではなく、お客さんがサーフィンライフを楽しむサポートをすることだといいます。

具体的には、
・お客さんが海に入っているのを見たら一緒に入ってセッションしたり、アドバイスをする
・お客さんがトリップに行くと聞けば、プロサーファーとして各地の海に行った経験を活かし、トリップ先のポイントや美味しいご飯屋さんの情報を提供する
など…。
直接的にはお金にならないことかもしれないけれど、“SURFSHOP MORE”に来てくれるお客さんがサーフィンをより楽しむことができる、
いわば、“SURFSHOP MORE”の付加価値を高めることを心がけるようにしているといいます。

まとめ

プロサーファーとして「自分が波に乗る」という仕事に就き、その先の壁も経験した一楽氏。
インタビューをしながら、今はサーフショップオーナーとして「人を波に乗せる」という仕事にも、楽しさや大切さを見出していることが感じられました。

最後に、一楽氏が思う「サーフィンの魅力」について伺いました。

『海はつながっているし、世界各地の海で波に乗ることで、海つながりの友達が各地にできる。あとは爽快感。特にチューブライドは醍醐味。あれは経験できるなら、1人でも多くの人に経験してもらいたいと思うほど中毒性が高い。』

四国には、河口など大きな波がチューブを形成する日本屈指のポイントが多くあります。
生見の“SURFSHOP MORE”に行けば、一楽氏の手ほどきのもと、レアなポイントでチューブライドができるかもしれません。

■取材協力:SURFSHOP MORE

〒781-7414 高知県安芸郡東洋町大字生見575-1
・平日…9時~夕方(暗くなる迄)
・土日祝日…7時~夕方(暗くなる迄)
・定休日…嵐の日(年中無休)
TEL:0887-29-3615
HP:http://surfshopmore.com/
Instagram:@surfshop_more

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#スノーボード
Writer
Nanae.A
Nanae.A ライター

サーフィン歴2年、万年初心者ママサーファー。
スノボ歴は5年。

リアル初心者・女性・2児の母である独自の視点を交えて、横ノリスポーツの魅力や情報を記事にのせてお届けします。

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