サーフィン中に怪我をした経験がある人の割合は94%。
2006年に整形外科クリニック等が、62人のサーファーにおこなったアンケート調査(※1)の結果です。
ほとんどのサーファーが、サーフィンで怪我をした経験がありました。
またサーフィンによる怪我には、
・フィンによる切り傷、パーリング時の打撲・骨折などの「急性外傷」
・腰痛や肩の痛みなどの「慢性障害」
の2種類が多いこともわかりました。
どちらもサーフィンというスポーツの特性が、怪我の原因です。
そこで、
■サーフィンに多い「急性外傷」と「慢性障害」の原因
■サーフィンの怪我を予防する方法
について詳しく解説します。
サーフィンに多い怪我とその原因について、正しく知り。
正しい予防法でサーフィンの怪我を防ぎ。
永く安全にサーフィンを楽しめるようにしましょう。
(※1)森山 剛, 下田 健一朗, 縄井 清志「サーフィン傷害の実態調査」2006年 Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
Contents
サーフィンの怪我「急性外傷」の原因
2007年に、整形外科院によって「サーフィン外傷の検討」(※2)調査がおこなわれました。
調査対象は、サーフィンによる外傷治療のため来院したサーファー172人。
患者がサーフィンによって負った外傷の種類は、多い順に
・切り傷、挫傷
・肩脱臼
・骨折
・打撲
・その他(クラゲ接触、鼻血、首髄損傷など)
外傷のうち「切り傷、挫傷」が占める割合は71%で最多でした。
また2013年の別の整形外科による研究(※3)でも、サーファーの外傷では
・切創
・打撲
・捻挫
が大多数とされています。
ここからはサーフィンの急性外傷で多い、切り傷・打撲・骨折・捻挫などの原因を解説します。
(※2)小林 和克, 市川 恒信, 高橋 充, 森 泰一(愛知県厚生連渥美病院整形外科)「サーフィン外傷の検討」2007年「中部日本整形外科災害外科学会雑誌50巻1号」
(※3)松本 悠市, 稲田 邦匡, 有 馬三郎,祢津 雅彦, 木原 隆徳(医療法人社団南洲会勝浦整形外科クリニック)2013年「当院における日本プロサーフィン連盟公認プロサーファーの障害調査」第24回日本臨床スポーツ医学会学術集会
1.フィンや岩場で切る
サーフィン中の怪我で多いのが、フィンや岩場での切り傷です。
フィンは丸みを帯びた形をしていますが、意外に鋭利。
波に巻き込まれた状態で体に当たると、深い切り傷を追うことが多々あります。
・フィンが額にあたって切れて、何針も塗った
・フィンが頭にあたって切れて出血。救急車で運ばれた。
・パーリングした時にフィンの上に落ちてしまい、太ももにフィンが刺さった。大量出血で救急車で運ばれた。
などは、サーフィン歴2年の私が浅い経験の間に見聞きしたフィンの怖い話。
また岩場のゴツゴツや浅瀬の石で、足を切ることも多いです。
2.パーリングで打撲・骨折する
パーリングした後に、波に巻かれて吹っ飛んだサーフボードが体にヒット。
私もこれまで、顔・手首・腰・太ももなど、数えきれないぐらいアザをつくってきました。
打撲ならまだ良い方ですが。
衝撃が強ければ、骨折などの大怪我にもつながります。
私の知人は、飛んできた人のサーフボードが背中に当たって打撲を負いましたが。
サーフボードが当たった箇所は、ウェットスーツがぱっくり裂けていたといいます。
また頭にあたって脳震盪を起こして意識を失えば、海で溺れて死に至るリスクもあります。
3.波に巻き込まれて捻挫・脱臼する
波のパワーに巻き込まれて、捻挫・脱臼といった怪我をすることも。
2006年の整形外科クリニック等の調査(※1)では、パドルで肩を上げた際に、前方から波のパワーを受けて肩関節脱臼を起こしたケースが多く見られたといいます。
また足がつくような浅瀬でも、波に巻き込まれて怪我をすることがあります。
私は浅瀬でホレた波に巻き込まれ、顔面から海底に叩きつけられたことがあります。
叩きつけられた瞬間、首にグキッと音がしたときは「やばい」と思いました。
幸いにもビーチだったので、怪我は鼻血と首・肩のむち打ち(全治6ヶ月)ですみましたが。
一歩間違えれば首の骨を負っていたり、頚椎損傷にもつながりかねなかったなと、今でも一番怖い怪我の思い出です。
足がつくような浅瀬でも、油断してはいけないなと痛感しました。
サーフィンの怪我「慢性障害」の原因
2006年の整形外科クリニック等の調査(※1)によると、サーファーが体に痛みを感じる部位は「腰」が最多。
ついで「肩」の痛みという結果になりました。
2013年にプロ・セミプロなど競技サーファーを対象におこなった怪我調査(※3)でも、患者が抱える慢性障害の部位は
・腰(筋膜性腰痛症、椎間板ヘルニアなど)…31%
・肩関節(肩関節周囲炎など)…27%
・下肢(股関節、足関節など)…16%
・頭、首(頸部筋筋膜炎、頸部椎間板ヘルニアなど)…15%
・その他(胸部・脊柱・肘・前腕)…11%
と、やはり「腰」「肩」の痛みが多い結果になっています。
ここからは、サーフィンの慢性障害に多い「腰」「肩」などの痛みの原因を解説します。
1.背中を反る姿勢で「腰」「首」を痛める
サーフィンで特徴的な、背中を反る姿勢。
不安定な波の上で長時間背中を反っていると、腰や首に負担がかかります。
長期間の負担によって、腰や首に慢性的な痛みを抱えたり、ヘルニアを発症することも。
2.パドリングで「肩」を痛める
2006年の整形外科クリニック等の調査(※1)によると、サーフィンでパドリングをしている時間は全時間の約40〜50%。
パドリングは心拍数が平均75〜85%と運動負荷も高いため、肩に負担がかかります。
肩に負担をかけ続けると、四十肩や五十肩のように肩が上がらなくなったり、動かすときに痛みを伴う場合があります。
3.技で「股関節」や「膝関節」を痛める
サーフィンでは、ボトムターンや当てこみなど、高度な技ほど股関節や膝に負担がかかります。
2013年の競技サーファーの怪我調査(※3)によると、競技サーファーは、一般サーファーに比べて慢性障害の割合が多いといいます。
これは競技サーファーのレベルが高く、下手なパーリングなどによる外傷が減るという理由もありますが。
サーフィンの高度な技やアクションを頻繁に行うことで、股関節や膝関節を痛めやすくなっているともいえます。
サーフィンで怪我をしない方法7選
サーフィンの怪我には、
・フィンや岩場による切り傷
・パーリングによる打撲・骨折
・波のパワーで捻挫・脱臼
・パドリングで慢性的な腰痛や肩痛
などがあります。
こうしたサーフィン特有の怪我は、
・入る海の選び方
・パーリングの仕方
・ウェアや道具の選び方
・ストレッチやトレーニング
によって、防ぐことができます。
ここからは、サーフィン特有の怪我を防ぐ7つの方法を詳しくご紹介します。
1.混雑した海に入らない
サーフィンで怪我をするリスクが高いのが、混雑した海。
混雑した海は当然、物や人とぶつかるリスクが高くなります。
特にサーフィン初心者は海でのサーフボードの扱いに不慣れで、パーリングも多め。
サーフィン初心者ほど、自分が怪我をするリスク・人に怪我をさせるリスクが高くなります。
とはいえ、初心者でも入りやすいメジャーポイントほど混雑しているもの。
また週末ビジターサーファーの場合、「混雑した海に入るな」という方が無理な話でもあります。
海がとても混んでいるな、と思ったら。
・波が少々悪くても、なるべく人が少ないエリアで入る
・人が少ない時間帯(朝イチ・昼どき・日没ギリギリなど)に入る
といった工夫で、少しでも混雑した海を避けましょう。
2.パーリングの仕方に気をつける
パーリングした時は、必ず「頭」と「顔」を腕で隠すようにして守りましょう。
激しくパーリングした後は、サーフボードがどこに飛んでいるかわかりません。
可能であれば、
「パーリングする!」
と思ったときにサーフボードを持ちながらこけると、サーフボードが飛んでいくのを防げます。
自分の身を守るだけでなく、人にサーフボードが当たるのを防ぐこともできます。
3.肌の露出をなるべく抑える
2007年の調査「サーフィン外傷の検討」(※2)によると、サーフィンで外傷が起きた部位は
・頭
・顔
・腕や足
など、肌の露出した部分が多かったといいます。
夏でもなるべくタッパーなどを着て肌の露出を抑える方が、怪我防止のためには安心です。
4.リーフブーツを履く
海底に岩や珊瑚礁があるリーフポイントでは、リーフブーツを履きましょう。
ゴツゴツした岩や珊瑚礁は鋭利で、足が触れただけでもざっくり切れることがあります。
リーフブーツがあれば、切り傷から足を守ってくれます。
5.ソフトフィンを使う
一般的なフィンは、プラスチック製で硬く鋭利。
しかし柔らかいシリコン素材のソフトフィンもあります。
ソフトフィンであれば、万が一当たっても、足を切る心配がなくなります。
しかし柔らかい分、加速や旋回などの反応が悪く、乗り心地はいまいちという声も。
フィンによる乗り心地をそれほど重視しない人や、サーフィン初心者におすすめです。
6.サーフボードのノーズガードを使う
ショートボードは、先端が尖った形をしています。
自分に当たるのはもちろん、人に当てて怪我をさせるリスクもあります。
サーフボードのノーズガードをつければ、先端を柔らかいシリコンカバーで覆うことができます。
ただし上級者やプロサーファーなど、ノーズからのレールワークなどにこだわる人にはあまり向きません。
7.ストレッチやトレーニングをおこなう
腰痛や肩の痛みなどの慢性障害を改善・予防するには、ストレッチやトレーニングが欠かせません。
しかし2006年のサーフィン障害の実態調査(※1)によると、サーフィン後のストレッチなど、クールダウンをしていないサーファーは68%。
サーフィンは腰や肩などに負担がかかるスポーツですが、適切なコンディショニングができていない実態がわかっています。
確かに私も海から上がった後は、食べて寝るのみ。
肩・背中・腰など、サーフィンでよく使う筋肉や関節を伸ばして鍛えると、可動域が広がります。
可動域の広い柔らかい体でサーフィンをすると、怪我をしにくくなります。
たとえばサーフィンによる腰痛を改善予防するには、
・太ももや股関節のストレッチ
・腹筋のトレーニング
・お尻のトレーニング
が効果的。
肩の痛みには、胸の筋肉・肩関節のストレッチが効果的です。
※動画提供:@shorefitness_okayama
体の可動域が狭いまま無理にサーフィンをしていると、首や腰に負担がかかり、腰痛などの原因になります。
日頃から筋肉や関節を鍛えながら、可動域を広げることが大切です。
▼サーフィンの怪我予防にも効果的!理学療法士が教える筋トレ11選
【理学療法士監修】サーフィンの筋トレ11選!動ける体をつくる4つのポイント
#サーフィンサーフィンで人に怪我をさせてしまったら?慰謝料に備える保険
サーフィンでは、自分が怪我をするリスクはもちろん。
人に怪我をさせるリスクもあります。
後遺症が残るような大怪我になった場合、多額の慰謝料が発生することも。
サーフィン中に、人にサーフボードが当たってしまい、相手の顔面に大きな裂傷ができた。
相手は全治2ヶ月の骨折の末、左額にケロイドが残り、後遺症12級14号(外貌に醜状を残すもの)と認定。
相手方に、慰謝料として300万円を支払うことになった。
サーフィン中、万が一相手に怪我をさせた時の慰謝料はもちろん。
自分が怪我をした時の治療費にも備えて、サーフィン用の保険に加入しておくと安心です。
サーフィンでは、
・自分の怪我に備える「傷害保険(特約)」
・他人への弁償に備える「個人賠償責任保険(特約)」
・他人との交渉に備える「示談交渉特約」
といった補償を備えた保険がおすすめです。
▼サーフィンの怪我や事故に備える保険について詳しくはこちら
サーフィンの事故に備える保険選びのポイント&おすすめ保険3選
#サーフィンまとめ
サーフィンの怪我には、切り傷などの急性障害や、腰痛などの慢性障害が多いことがわかりました。
サーフィン中の切り傷、打撲、捻挫、骨折といった怪我は、
・混雑した海を避ける
・パーリングの仕方に気をつける
・リーフブーツを履いたり、肌の露出を抑える
・ソフトフィンやノーズガードを使う
といった方法で予防することができます。
またサーフィンによる腰痛・肩の痛みなどの慢性的な怪我は、
・筋肉や関節のストレッチとトレーニング
で予防または改善することができます。
また万が一自分が怪我をした時の治療費や、人に怪我をさせてしまった時の慰謝料に備えて、保険にも加入しておく方が安心です。
サーフィンは、海という不安定な環境でおこなう激しいスポーツ。
怪我はつきものですが、できるだけ予防策を講じて、怪我なく永く楽しめるようにしましょう。
サーフィン歴2年、万年初心者ママサーファー。
スノボ歴は5年。
リアル初心者・女性・2児の母である独自の視点を交えて、横ノリスポーツの魅力や情報を記事にのせてお届けします。
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