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サーフィンの大会ルールを知ってオリンピック観戦を楽しもう!採点の動画問題も

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9,059 views 2021-7-20 UPDATE

サーフィンがオリンピックで初めて正式種目となりました。

コロナ禍で開催そのものが危ぶまれ、開催にも賛否が巻きおこっていました東京オリンピック。

しかし開催するとなれば、やはり全力で試合に挑み、世界トップレベルの技を披露してくれる選手たちの活躍を応援したいものです。

サーフィンの試合は予備日を含め、2021年7月25日(日)〜8月1日(日)にかけて千葉県の釣ヶ崎海岸(志田下ポイント)で行われる予定です。

しかしサーフィン歴2年の私、競技サーフィンの大会ルールをほぼ知りません。

サーフィンの大会ルールを知って、オリンピック観戦をもっと楽しみたい!

そこでNSA(日本サーフィン連盟)が主催する「ジャッジ講習会」(※2020年2月開催)に参加。

・サーフィンの試合方式は?

・どんなライディングが高評価される?

・サーフィン観戦を楽しむために知っておきたいルールは?

など、 オリンピック観戦がさらに楽しくなるサーフィン大会のルールのツボ をご紹介します。

最後には、 実際にサーフィンのライディングを採点できる動画問題 もご用意。

ぜひチャレンジしてみてください。

サーフィン観戦を楽しむなら!五輪前に知っておきたいサーフィンルールのツボ3つ

サーフィン観戦を楽しむためには

●勝敗を決定する採点ルール

●採点するジャッジの視点

●サーフィンの戦略性を高めるプライオリティルール

のツボを押さえておくのがおすすめ。

・どんなライディングが高評価されるのか?

・ジャッジはどんな視点でスコアをつけているのか?

・選手は何に気をつけながら波を選び、試合運びをしているのか?

NSA(日本サーフィン連盟)の公認ジャッジテキストをもとに、サーフィン観戦を楽しむためのルールのツボ3つをご紹介します。

1.サーフィン採点のポイントは「サーフコンディション」

サーフィンの採点基準で特徴的なのは

 サーフコンディション(=その時の波の状態)にあわせたライディングができているか 

という視点です。

サーフィンは採点競技。

陸上の100m走のように、タイムを競うのではなく。

フィギュアスケートのように、技の成功や完成度による点数を競います。

ただサーフィンがフィギュアスケートと違うのは、舞台がスケート場のように整備された施設ではなく、自然の海であること。

そのため「4回転ジャンプ」という技を決めたら高得点、ではなく。

乗っている波がチューブを巻き始めたら、その波でチューブライディングを決めれば高得点のライディング。

3アクションは繋げられる波に対して、2アクションしか入れられなければ低評価のライディング。

など、波の状態に応じてどんなライディングができたかで評価が決まります。

なんか難しい。

というわけで、ジャッジも複数人います。

「この波ではこういうライディングが高得点」

という感覚は、百戦錬磨のジャッジでも人によって僅差あり。

そのためジャッジの中にも、当日の採点見解を示すヘッドジャッジがいたり、複数人のチーム編成になっています。

波がいい時は、選手たちのアクションも見応えあるものが連発するでしょうし。

小波でもそれだけ乗れちゃうんだ…!という感嘆もあります。

大会当日の波はどんな状態か。

その波に合わせて、選手たちがどんなサーフィンを見せるのか。

自然相手だからこそサーフィンが面白いのは、試合観戦でも一緒なんですね。

2.サーフィンジャッジが見ているのは「サーフボードの動き」

ジャッジは何を見て、さっきのライディングは5.0、今のは3.5…と判断しているのでしょうか。

NSA(日本サーフィン連盟)の公認ジャッジテキストによると、ショートボードのジャッジ基準は

●積極性および難易度の高さ

●マニューバーの革新性と進歩性

●メジャーマニューバーの結合性

●マニューバーの種類の豊かさ

●スピード、パワーそして流れ

「日本サーフィン連盟公認ジャッジテキスト(2019年10月改訂)」より一部抜粋

を採点の主要な要素としています。

なんか難しい。

マニューバーとは「波の上でボードの方向を変えること」の意味。

つまりジャッジは、サーフボードの動きを見ていることになります。

たとえばノーズ(先端)が大きく動いていれば、波のトップでサーフボードをしっかり返したアクションができています。

サーフボードの上下の動きがはっきりしていれば、波のボトムやトップを使った深いターンができています。

また波のクリティカルセクション(=波が崩れる瞬間の一番パワーのあるところ)で入れたアクションは、スピーディーかつパワフルに決まります。

素人目にも、全体的にサーフボードの動きが大きく滑らかで、波が崩れる瞬間にダイナミックなアクションが入ると高得点が出ている印象です。

選手のライディングを見るとき、

・サーフボードが大きく動いているか(ノーズや上下の動き)

・波が崩れる瞬間にアクションが入っているか

に注目し、どんな点数がつくのか予想してみると、観戦をより楽しめます。

3.「プライオリティルール」はサーフィンの戦略性を高める

サーフィンには、波の優先権が順番に回ってくるプライオリティルールというものがあります。

例えば4人で試合をしている時であれば、4人の選手に順番に「波に優先的に乗れる順番」が回ってきます。

波の優先権は自分がライディングをすると失われ、また最後尾の4番目から順々に回ってきます。

※プライオリティルールはやや複雑なので、詳しくは後述しています

複雑なプライオリティルールですが、サーフィン競技の戦略性や面白さを高める効果もあります。

海の限られた範囲で、いい波が割れる場所はある程度絞られます。

プライオリティ(波の優先権)1番目が回ってきたとき、自分が乗りたいと思った波には、自分だけが乗れる。

しかし一度波に乗ってしまうと、優先権はまた最後尾になってしまいます。

しかもうっかりプライオリティ妨害をすると、致命的な減点ペナルティがある。

限られた範囲と時間と条件の中で、どの波を選んで乗り、どれだけ高得点を出せるか。

選手たちは、勝つためにただがむしゃらに波に乗っているのではなく。

戦略的にどんなポジション取りや波選びをしているのか、を考えると面白さに深みが増します。

サーフィンの五輪大会ルールの基本

サーフィンの大会はトーナメント制の採点方式です

ここからは、

■試合時間

■1試合で戦う選手の人数

■採点方法

など、サーフィン大会ルールの基本について解説します。

サーフィンの試合はトーナメント制

サーフィンの大会はトーナメント制。

第1ラウンドから順に勝ち上がり、決勝ラウンドを目指します。

各ラウンドの試合は「ヒート」と呼ばれます。

たとえば第2ラウンドの第4試合目は、「第2R(ラウンド)の第4ヒート」となります。

下図は、実際の大会ヒート表の一例。

この大会であれば、第1ラウンドでは6つのヒートが組まれ(Round1 6Heats)、ラウンドを勝ち上がっていくとクオーターファイナル(準々決勝)などに進みます。

 

2021年の東京オリンピックでは、一番最初の試合であるラウンド1のヒート1から、日本の大原洋人選手が登場。

またラウンド3からは、ヒートを勝ち進んだ選手同士の1on1の対決も見られます。

サーフィン開催期間中は、関東に接近する台風の影響でビッグウェーブも予想されており、大注目の戦いとなりそうです。

サーフィンの試合時間と人数

ヒート時間は、波のコンディション等によって変動しますが、1ヒート約20~30分。

東京オリンピックでは1ヒートを4人で争い(4メンヒート)、高得点の上位2名が次のラウンドへ勝ち上がります。

ラウンド3から決勝までは、ヒートを勝ち進んだ選手同士の1on1のヒートとなります。

選手は、赤・白・青・黄などに色分けされたラッシュガード等を着用します。

サーフィン大会の採点方法

サーフィンの採点は通常、5人のジャッジ(ヘッドジャッジ1名+パネルジャッジ4名)によっておこなわれます。

選手のライディングにスコアをつけるのは、4人のパネルジャッジ

ヘッドジャッジは、パネルジャッジのスコアをまとめたり・その日の波の状態等にあわせた採点見解を示したり・選手の抗議に対応したり、ジャッジチームのリーダー的な役割を担います。

※東京五輪2020では、ヘッドジャッジ2名・パネルジャッジ7名の合計9名のジャッジ体制で採点が行われました

1本のライディングは10点満点。

下図は、スコア集計シートの一例です。

選手のライディング点数は、パネルジャッジがつけた最高点・最低点をカットし、残りのスコアを平均して決めます。

最終的にライディングの上位2本の合計点が、各選手の点数となり、ヒートの勝敗が決まります。(ベスト2ウェーブ制)

たとえばスコア表で「Blue」の「青空星生」選手の場合。

5本目ライディングの「3.25」点数の内訳を見てみましょう。

まずジャッジ3(J3)がつけた最低点「2.5」と、ジャッジ4(J4)がつけた最高点「3.8」がカットされます。

残りのジャッジ1(J1)、ジャッジ2(J2)がつけた点数「3.5」と「3.0」の平均が、ライディング点数「3.25」となります。

さらに全5本のライディングのうち、高得点の1本目(7.0)と4本目(5.0)の合計12.0が、青空選手の最終点数となります。(ベスト2ウェーブ制)

ライディングの点数は、各ジャッジの出した平均点数が。

その試合の各選手の最終点数は、高得点のライディング2本分の合計となるんですね。

例えば試合で「7.0」の高得点ライドを1本出しても、もう1本のライド点数が伸び悩んで「1.0」であれば、最終点数は「8.0」。

一方、平均的ながら「5.0」と「4.0」のライディングを2本出せば、最終点数は「9.0」となります。

試合に勝つには、10点満点のうち、なるべく高い点数のライディングを2本以上出すことがポイントになります。

サーフィンのプライオリティルール(波の優先権)

サーフィンの大会には、プライオリティという波の優先ルールがあります。

サーフィンでは、ひとつの波を取り合うことがよくありますよね。

テイクオフの早い上手な人に、自分が乗ろうとしていた波をとられてくそー!なんてよくあるわけです。

もちろん「波のピークに一番近い人が、その波に乗る権利がある」というルールがあるわけですが。

大会では、こうした選手同士の波の取り合いをなくすために、順番に波に乗る優先権が与えられます。

わかりにくいので図で説明すると。

■プライオリティを持つ選手は、自分が乗りたい波に集中できる

たとえば赤の選手がプライオリティ1番目のとき。

赤の選手が乗ろうとする波に、他の選手が乗ることはできません。

プライオリティ1番目を持っている選手は、波の取り合いを気にせず、自分が乗りたい波に乗ることだけに集中できます。

同じように、プライオリティ2番目の青は、白・黄に対して。

プライオリティ3番目の白は、黄に対してだけ、波の優先権を持っています。

■プライオリティはライディングすると失われ、テイクオフゾーンに戻ると復活する

ライディングをすると、プライオリティが失われます。

しかし再びパドルアウトしてプライマリーテイクオフゾーン(=PTZ)に戻ると、プライオリティが復活します。

さきほどプライオリティ1番目だった赤の選手は、ライディング後PTZに戻ると、プライオリティ4番目に。

赤以外の選手は、プライオリティの順番が繰り上がります。

選手がライディング→パドルでPTZに戻るを繰り返すたびに、プライオリティの順番もぐるぐる回っていく仕組みです。

■プライオリティ妨害になる場合・ならない場合

自分よりプライオリティの優先順位が高い選手と同じ波に同一方向に乗ると、「プライオリティ妨害」になります。

東京五輪2020では、銅メダルを獲得した都築アムロ選手が、一番最初の試合でプライオリティ妨害をしてペナルティをもらっていました。

たとえば下図だと、赤の選手がプライオリティ妨害をしたことになります。

仮に、赤の選手が波のピーク付近にいた場合。

通常であれば、ピークに近い赤に波の優先権があります。

しかしプライオリティルールでは、プライオリティ順の高い青が優先です。

ただし、自分よりプライオリティの優先順位が高い選手と

・同じ波でもレギュラー・グーフィーと違う方向に乗った場合

・違う場所でブレイクする波に乗った場合

などは、プライオリティ妨害にはなりません。

■プライオリティ妨害には手痛いペナルティ

プライオリティルールを守らないと「妨害」になり、得点上、手痛いペナルティがあります。

本来、得点は上位2本のライディング合計点(ベスト2ウェーブ制)。

しかしプライオリティ妨害をすると、上位1本のライディング点数しかカウントされなくなります。

ライディング1本の点数と、2本の合計点数ではかなり差が出ますよね。

ヒートを勝ち上がりたい選手にとっては、プライオリティ妨害は致命的。

そのため選手は、自分のプライオリティの順番を常に把握しておく必要があります。

プライオリティルールはなかなか複雑。

もっと厳密に知りたいという人は、NSA(日本サーフィン連盟)の解説動画がおすすめです。

プライオリティ妨害になるケース・ならないケース・減点ペナルティの種類など、より詳しくわかりやすく解説されています。

【動画問題】実際にサーフィン大会の採点をしてみよう!

百聞は一見に如かず。

実際のサーフィンの大会映像を見て、1つ1つのライディングを採点してみましょう。

「このライディングは一体何点?」

それを考えているうちに、サーフィン観戦を楽しむための見る目が養われるはずです。

サーフコンディションと例題

まずは下の動画で、サーフコンディション(=波の状態)をチェックしてください。

ホレた早い波だなぁとか、ボヨボヨで抜けづらそうな波だなぁとか…

続いて、その日の選手のライディング2本と得点が、例題として出てきます。

「このコンディションだと、このライディングが3.5点なのか…」

など、本題の採点の参考にしてください。

出典:NSAsurf「2019秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」より一部抜粋

問題1.RIDE8

出典:NSAsurf「2019秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」より一部抜粋

波に合わせた1ターン。

10点満点中、あなたは一体何点をつけるでしょうか?

問題1の模範解答:2.0

問題2.RIDE7

出典:NSAsurf「2019秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」より一部抜粋

ミスに見えるライディングには、10点満点中、一体何点がつくのでしょうか?

問題2の模範解答:1.0

問題3.RIDE6

出典:NSAsurf「2019秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」より一部抜粋

3アクションつながったライディング。

10点満点中、一体何点がつくのでしょうか?

問題3の模範解答:3.5

意外に点数が低くて驚いた人もいるのでは。

NSA「2019年秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」の解説によると、

3ターンのコンビネーションだが、全てボトムからレールを使ったアプローチがされていない。

NSA「2019年秋季公認ジャッジ資格試験映像問題1」解説1

とのこと。

確かにターンの時、レールを使った滑らかな動きが足りないようにも見えます。

問題4.RIDE10

出典:NSAsurf「2019秋季公認ジャッジ資格試験映像問題」より一部抜粋

最後飛んだ!エアリアル!

10点満点中、一体何点がつくのでしょうか?

問題4の模範解答:8.0

エアリアルは難易度が高く、成功すれば高得点。

ボードのテール(後ろ)部分までしっかり上がった空中回転と、きれいな着水が高得点のポイントです。

まとめ

今回、サーフィン観戦を楽しむためのルールを学ぶなら、勝敗を決める採点方法の理解が欠かせない。

そして採点方法を学ぶなら、ジャッジ目線が欠かせない。

とNSA(日本サーフィン連盟)の「ジャッジ講習」に参加しました。

講習会では

・サーフィンの採点基準は、波にあわせたライディングができているかどうか

・採点では、サーフボードの動きを見ることがポイント

・プライオリティルールの仕組みと、勝敗への影響

の3点が大きな学びになりました。

その中でサーフィン歴1年の私が素人なりに感じた、サーフィン観戦を楽しむポイントは

●サーフィンの採点基準を知って、ライディング得点を予想しながら観戦すること

●プライオリティルールを知って、選手のポジション・波選びなど戦略性を楽しむこと

●繋がるアクションや、華麗なエアリアルにシンプルに興奮すること

サーフィンの大会を観戦していると、いつ波がくるかわからないし、いつ素晴らしいアクションが飛び出すかもわからないので、本当に目が離せなくなります。

きたるオリンピックでは、採点基準やルールを理解して、サーフィン観戦を楽しみましょう!

▼同じくオリンピック新競技!スケボーのルール・日程・日本代表選手などについて詳しくはこちら

スケートボードの大会って何を競う?ストリート・パークのルールを紹介!

#SKATEBOARD
Writer
Nanae.A
Nanae.A ライター

サーフィン歴2年、万年初心者ママサーファー。
スノボ歴は5年。

リアル初心者・女性・2児の母である独自の視点を交えて、横ノリスポーツの魅力や情報を記事にのせてお届けします。

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