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スノーボード業界で不動の地位を確立しているBURTON
スノーボーダーならば、知らない人はいないはずの絶対的ブランドBURTON。もはやスノーボーダーでなくとも、多くの人がその名を一度は耳にしたことがあるはず。
BURTONなくして、今日の
フリースタイルスノーボーディングはないといってもいいほど、BURTONの業界への功績は絶大で、今なおトップブランドとしてシーンの最先端を走り続けています。
多くのBURTONファンがいる一方、アンチBURTONという人も少なくないでしょう。
しかしそんな“アンチ”の存在こそ、BURTONがいかに大きな影響力を持っているかを示していると言えると思いませんか?
credit : business.transworld.net
Jake Burton(ジェイク・バートン)氏がアメリカ・バーモント州のガレージでスノーボード作りを始め、BURTON SNOWBOARDSを設立したのがおよそ40年前。
その歴史とBURTONの世界を掘り下げて知ることは、スノーボードをより深く理解することにつながるはず……!
そんな思いから、今回はBURTONというブランドについて、ちょっとだけ踏み込んでご紹介したいと思います。
BURTONの誕生
スノーボードの先駆者たち
まずは、スノーボードそのものの生い立ちから振り返ってみましょう。
スノーボードの生誕にはさまざまな説があるのですが、アメリカの子供用玩具メーカーが1965年に販売したSNURFERがスノーボードの原型と言われているほか、後にSIMSを築くTOM SIMS(トム・シムス)氏が、13歳当時にスケートボードを改造して作ったスキーボードが起源ともされています。
image : SNURFER
現在のスノーボードとは異なり、バインディングは前後に2つは付いていない。ノーズ部分に操作する時に使う紐とサーフボードでいうデッキパッドのようなものが滑り止めとして設置されているのが特徴。
現在のように回転することは考慮されていなかったため、ツインチップではない。
スノーボードの開発は1970年代に加速し、1972年に最初のボードブランドWINTER STICKが登場、続いて1976年代にSIMSが産声を上げます。
14歳の時にSNURFERの影響を受けたジェイクがBURTONを立ち上げたのは1977年。そしてBURTONは、1980年代半ばにゲレンデを滑ることができる道具を開発して大量生産を開始し、徐々にその名を広めることになったのです。
BURTONとSIMS
1980年代、アメリカ・東海岸をベースとするBURTONと、つねに人気を二分してきたのが西海岸のSIMS。
ヒッピーカルチャー発祥の地であり、スケーターやサーファーが多く、自由を求めるマインドが根付いた西海岸を拠点とするSIMSのスノーボードへのアプローチは、BURTONのそれとは正反対でした。当時のBURTONが、それまで主流だったダウンヒルやスラロームなどのレースに重きを置く一方、SIMSは初となるハーフパイプコンテストを開催するなど、フリースタイル性を追求。
“西のSIMS、東のBURTON”として両者はしのぎを削っていましたが、SIMSのライダーで世界チャンピオンだったCraig Kelly(クレイグ・ケリー)がBURTONへと移籍したことで、その後の明暗がはっきりと別れていくことになるのです……。
credit : Craig Kelly
突出した実力とタレント性を持つクレイグの存在は、BURTONにとって最高の広告となったと同時に、彼のフィードバックがBURTONのプロダクトを飛躍的に進化させました。スノーボード界不動のスター・クレイグとともに、BURTONはあっという間にNO.1ブランドの地位を揺るぎないものとしました。
BURTONのギアの特徴
乗り手の意見を尊重したモノ作り
BURTONは、ギアだけでなく、ウエア、バッグ、グローブ、パーカーなどのアパレル類にいたるまで、あらゆるアイテムをラインナップする総合ブランドとなっています。
全身BURTONを身にまとった“BURTON信者”なんて呼び方をされる人たちもよく目にしますよね。
BURTONが多くの人に指示されるのは、カリスマ性のあるライダーたちの存在はもちろん、あらゆる製品が揺るぎないスタイルと確かなパフォーマンス性を併せ持っているからでしょう。その裏には、徹底したプロダクト製作へのこだわりと、それに伴う開発力があるのです。
前述したように、BURTONのギアが革新的に進化したのは、クレイグがBURTONの一員となり、現場の声を開発サイドに届けて技術者ともにギアの開発の発展に貢献したからだと言われています。
BURTONではクレイグ亡き今も尚、ライダーの意見をもっとも尊重してプロダクト開発を行っています。
アメリカのBURTON本社に隣接する開発ラボに「CRAIG’S」という名称がつけられいることからも分るでしょう。
そして社員は、みなスノーボーダー。もちろん還暦を過ぎたジェイクもバリバリの現役で、1年の3分の1は雪山を滑走しているそうです。
スノーボードを心から楽しみ、愛する人たちが、第一線で活躍するライダーの意見を取り込みながらよりよい製品を生み出すことで成長を続ける……、BURTONブランドの説得力はそこにあるのです。
独自システムTHE Channelの登場
left : Burton Cartel EST Snowboard Binding
right : Burton Diode EST Snowboard Binding
credit : jp.burton.com
過去のBURTONによる革新的なギアの開発は数々ありますが、1985年に登場したソフトブーツと、固定式バインディングは現在のバインディングの原型となりました。そして1995年には、ステップインソフトバインディングを発表するなど、時代ごとに独自の新しいカタチ、素材、システムを考案してきました。
そんなBURTONによるここ最近の衝撃的なシステムの開発は、現在ギアの代名詞ともなっているTHE Channelシステムでしょう。
そのアイディアは斬新すぎて、はじめて登場した時には「どうやってバインディングを取り付けるんだ??」と困惑した人が続出しました。
THE channel
従来のボードにはインサートホール(BURTONでは3D、多ブランドは4×4)が設けられており、ここにバインディングを取り付けますが、THE Channel採用のボードにはレール状の溝が1本彫られていて、専用のESTバインディングを2本のビスで固定します。これまでの常識を覆すようなこの新システムは、クッション性やフィール、フレックス、調節性に優れ、BURTONの開発力を見事に見せつけることとなりました。
また、ブーツは徹底して無駄な要素を排除し、他ブランドに比べてひと回りほど小型化を実現。よりボードをダイレクトにコントロールできるESTシステムを最適化するように考え抜かれて進化を続けています。
BURTONでは、08シーズンよりTHE Channel搭載のボードをリリースし、現在では中上級者向けモデルのほとんどがこの新しいシステムを採用しています。
トップブランドが自信を持って提供するこのシステム、一度使用したらその自由さと快適さに驚くはずです!
ここでお気づきかと思いますが、BURTONのボードを選べば、必然的にバインディングもブーツもBURTON、というのがベストチョイスとなります。
もちろん、従来のディスク型も健在なので、板だけ、バインディングだけ、ブーツだけBURTONという選び方も可能です。しかし、BURTONの性能をフルに堪能したいのであれば、ギアをすべてBURTONで揃えることがもっとも有効なため、フルBURTONのセットアップをよく見かけることとなるのです。
不動のスタンダード CUSTOM
left : Burton Custom Snowboard
right : Burton Custom X Snowboard
credit : jp.burton.com
BURTONの板といえば、知っておいて欲しいモデルがあります。
1996年にリリースされ、20年以上もの間、世界中でもっとも多くのスノーボーダーたちに支持されてきた、CUSTOM(カスタム)です。
まさにBURTONの顔とも言えるこのボードは、パウダーでの浮遊感やスピン性能、オーリーパワーなど、どんなフィールドでも乗りこなせるオールラウンドフリースタイルボードを求めて生み出されました。
スノーボードの神様と呼ばれるTerje Håkonsen(テリエ・ハーコンセン)がかつて愛用していたのもCUSTOMでした。最近では、2014年ソチオリンピックのハーフパイプ銀メダリストであり、数々の大会で活躍する平野歩夢が使用していることでもよく知られています。
BURTONのすべてのボードはこのCUSTOMを基に、フレックスを調整したり、シェイプをいじったり、素材を変えたりすることで、多様にラインナップされているのです。
ちなみに、CUSTOMよりもよもフレックスが硬く、ハーフパイプやビッグジャンプ、ハードなライディング向けに作られているのがCUSTOM Xで、ソチ五輪銅メダリストの平岡卓が愛用するモデルになります。
CUSTOMのガールズ版がFEEL GOODとなり、FEEL GOOD ESがCUSTOM Xという位置づけです。
Burton Feelgood Snowboard
credit : jp.burton.com
あらゆるレベルや目的、スタイルに合わせて選べるよう、毎シーズンかなりの種類のボードがリリースされるBURTONのなかで、まさに核となる不動のスタンダードCUSTOM。もしボード選びに悩んだら、一度は乗ってみるべき名作です。
豊富なウエアのバリエーション
left : Burton [ak] 2L Velocity Anorak Jacket
right : Burton [ak] 2L Altitude Jacket
akラインのスノーボードウェアはGORE-TEX®とGUARANTEED TO KEEP YOU DRYの融合が実現しています。
credit : jp.burton.com
BURTONはウエアブランドとしても高い人気を集めます。BURTONのウエアは、その他のギア同様にとにかくバリエーションが豊富で、バイト代をなんとか必死に貯めた学生でも、費用に糸目をつけない余裕のあるオトナでも選びやすい広い価格設定も特徴のひとつです。
なかでも機能性を重視し、最高峰のパフォーマンスを誇るのが[AK]シリーズで、ライダーのフィードバックがダイレクトに反映された製品となっています。
[AK]とはアラスカを意味し、アラスカのようなシビアなコンディションでもライダーの身体を最良のコンディションにキープするために作られているので、バックカントリーなどの使用でも十分に信頼できるプロダクトというわけです。
最近では日本人クリエイターも活躍し、音楽プロデューサーの藤原ヒロシ氏がクリエイティブディレクターを務める「AK457」と、デザイナー相沢陽介氏が手がける「BURTON THIRTEEN」という2つのコレクションが展開され、注目されています。
ギアやウエアから小物にいたるまで、あらゆるスノーボーダーのニーズを想定し、それぞれにマッチする製品を送り出す、それがトータルブランドBURTONのブランド力なのです。
BURTONによるスノーボードの普及
伝統の一戦からファンなイベントまで
BURTONはいちメーカーとしてスノーボード用品を作っているだけでなく、さまざまなカタチでスノーボードを普及させる活動を行っています。コンテストやイベントの開催もそのひとつです。
男女のハーフパイプ、スロープスタイルのチャンピオンを決めるUSオープンやユーロオープンは、W杯やオリンピックよりもライダーたちに重要視されていると大会と言えます。
ほかにも世界各地で行われる「PARTY IN YOUR PARK」や「BURTON MOUNTAIN FESTIVAL」、ニュージーランドの「BURTON HIGH FIVES」、日本で開催される「BURTON RAIL DAYS」など、世界中でさまざまなイベントを企画・開催し、スノーボードの魅力や楽しさを発信しているのです。
BURTONによるスクール
華々しいイベントやコンテストの開催だけでなく、BURTONはスノーボーダーの底辺拡大を狙い、初心者向けにレッスンプログラムも開発しています。LTR(LEARN TO RIDE)と呼ばれるそのプログラムは、世界各国でビギナー用のレンタルとスクールレッスンとして設置され、初心者の7割以上を90分のレッスンで連続ターンと停止ができるようするという成果を出しているのです。
このプログラムのために特別に開発されたLTRボードを使用し、通常は習得するのに数日はかかる連続ターンをほんの短時間で、しかも楽みながらマスターできるようになるという画期的な企ては、スノーボードのスペシャリストたちが揃うBURTONだからこそ生み出せたものでしょう。
LTRを通してスノーボードを覚え、スノーボードを楽しむようになった人たちがギアを求めるようになれば、スノーボード市場全体が活性化します。未来のスノーボーダーの育成こそ、ジェイクとBURTONが今もっとも力を注いでいる活動のようです。
BURTONの直営店
left : BURTON FLAGSHIP STORE TOKYO
right : BURTON FLAGSHIP STORE TOKYO map
BURTON JAPANでは、ファッションとストリートカルチャーの中心地、東京・原宿のど真ん中にフラッグシップストアを構えています。昨年は、国内2店舗目となるフラッグシップストアを長野市にもオープンし、よりダイレクトにユーザの声を汲み上げる場となっているようです。
店内には、BURTON、ANALOG、ANON、RED、GRAVISなど、ファミリーブランドの最新コレクションが並べられ、この春夏からは新たにキャンピングコレクションも登場しています。
フラッグシップストアは、豊富すぎるBURTONの全ラインナップを一挙にチェックできる、BURTON好きにはまさに宝箱のような場所なのです。
また、期間限定でアウトレットストアを出店するなどの動きもあり、メーカーの枠を超えた動きがますます活発化しているので、今後も注目したいところです。
ここまで駆け足でBURTONを紹介してきましたが、BURTONというブランドついて、ちょっとでも理解を深めてもらえましたか?
シーンの第一線を走り続けるBURTON、好き嫌いは別として、やはりものスゴいパワーを持っていますよね。これからも、BURTONがどんな面白いことを仕掛けてくるのか、楽しみにしておいてきっと損はないはずですよ!
白馬でスノーボードショップを営む、元スノーボード誌編集者のフリーライター。
田舎ライフをマイペースに満喫しながら、とことん遊びを追求しています。
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