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伊万里焼はどんな焼き物?歴史や製造工程からわかる奥深さとは

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120 views 2024-11-15 UPDATE

日本の佐賀県で製造される伊万里焼は有田焼とも呼ばれ、日本人の暮らしに馴染んでいます。

その歴史、製造工程は知れば知るほど奥深く、1977年には国の伝統工芸品に指定されました。

国内だけでなく国外の方からも愛されており、その知名度、人気は年々高まり続けています。

そこで、この記事では、伊万里焼の歴史や製造工程、伊万里焼を深く知るために訪れるべきスポットについて解説。

伊万里焼の持つ魅力を余すところなくお伝えしていきます。

伊万里焼とは?

伊万里焼とは、佐賀県伊万里市で製造される磁器であり、「日本で最初の磁器」ともいわれるほど、深い歴史を持っています。

華奢な見た目にそぐわない耐久性を備えた高い機能性、大胆で鮮やかな配色、模様で目を惹くデザイン性、そして生活に関連するあらゆる製品で用いられている汎用性と、どれをとっても一級品です。

日本中で愛されている磁器でもあり、日常生活に完全に馴染んでいるため、日本人の暮らしになくてはならない存在だといっても過言ではないでしょう。

伊万里焼の歴史

伊万里焼は「日本で最初の磁器」ともいわれているように、その歴史は非常に深くなっています。

今から400年前、日本の著名な武将である豊臣秀吉が朝鮮出兵を実施した際、陶磁器の職人である「陶工」を朝鮮から日本に渡来人として同行させました。

その陶工が、佐賀県の有田町周辺で磁器の原料となる「陶石」を見つけたことをきっかけに、有田町周辺で磁器の製造が始まります。

製造された磁器は佐賀県の伊万里港から国内、そして海外へと輸出されたため、「伊万里焼」と呼ばれるようになります。

このように、初期の伊万里焼は「佐賀県有田町周辺」にて製造され、伊万里の港から輸出されたものを指しました。

一方、現代では「佐賀県伊万里市」で製造されているものを伊万里焼と呼び、有田町周辺で製造されるものは有田焼と呼ばれます。

こうした背景から、初期と現代の伊万里焼を区別するために、初期の伊万里焼を「古伊万里焼」と呼ぶこともあります。

伊万里焼の特徴

伊万里焼には大胆、かつ華やかなデザインが、鮮やかな色使いとともにあしらわれています。

用いられやすいモチーフや模様は、龍や花があげられ、一般的な陶磁器よりもインパクトが強いことが特徴です。

また、磁器の基本色となる白色をベースにし、青色とコントラストを作る意匠も特徴的です。

薄く華奢な見た目、手触りとは裏腹に耐久性が高く、皿、プレートといった食器、花瓶や壺といった置物など、さまざまなものが製造されています。

以上のように、伊万里焼には400年以上にわたる長い歴史に紡がれてきた伝統が存在しますが、一方で、現代にも適応するために絶えず変化を続けているのも事実です。

たとえば、より高品質な磁器の開発や現代クリエイターとのコラボレーションなど、先進的な取り組みを実施しています。

伊万里焼の製造工程

薄さと耐久性の両立や華美なデザインが伊万里焼の特徴ですが、これらは職人による綿密な製造工程により実現されています。

ここでは、伊万里焼の製造工程を7つのステップで解説していきます。

1.成形

はじめに、材料となる陶石を粉末になるまで粉砕し、純度を高めるために水簸(※)と呼ばれる作業を行います。

その後、適度に乾燥させ陶土を作り、それをこねて形を整えます。

※水簸(すいひ)
粒子の大きさにより水中における落下速度が異なる性質を利用した分離作業のこと。この作業により、鉄分などの不純物が取り除かれる。

2.仕上・乾燥

形を整えた状態の整形品から余分な部分を削り、仕上げ作業を行います。

また、この後の作業を行いやすくするために、表面を滑らかにする作業も同時に実施します。

3.素焼き

仕上げ、乾燥作業を実施したら、窯を使って素焼きします。

900度前後まで少しずつ温度を上げ、焼きあがったら少しずつ冷却を行うことで、器を大切に扱います。

4.下絵付

伊万里焼の最大の特徴である装飾は、「下絵付」「上絵付」の2段階を経て行われます。

下絵付では素焼きで硬化した表面に筆を使って描画し、この段階で製品の質が大きく左右されるといわれるほど、重要な作業です。

したがって、下絵付を行うのは熟練の職人であり、巧みな筆致や運筆はまさに「職人技」だといえるでしょう。

5.施釉

下絵付を行ったら、表面を釉薬(ゆうやく)と呼ばれるガラス質の液体で覆う施釉(せゆう)を行います。

陶磁器のつるつるとした肌触りを出すために欠かせない工程です。

6.本焼成

伊万里焼の高い強度を出すためには、本焼成(ほんしょうせい)と呼ばれる工程が必要不可欠です。

900度前後で焼きあげる素焼きよりもさらに高温である1,300度程度で焼き上げ、強度を向上させるだけでなく、釉薬が化学変化を起こし光沢が生まれます。

7.上絵付

本焼成を終えてそのまま製品となるものもありますが、一部の製品は上絵付を行います。

絵具を用いて描いた後、定着させるために800度程度で焼き上げたら完成です。

伊万里焼をより深く知るために訪れるべきスポット

佐賀県伊万里市にある各スポットを訪れることで、伊万里焼をより深く知ることにつながります。

ここでは、訪れるべきスポットを3つ紹介します。

伊万里市陶器商家資料館

伊万里市陶器商家資料館」は、伊万里焼発祥とされる1600年代(江戸時代)当時の陶器商の家屋を、そのまま資料館として活用している施設です。

館内には伊万里焼の傑作が並べられ、伊万里焼を知ることにおいてはこの上ない施設だといえます。

伊万里鍋島焼会館

伊万里の著名な窯元である「伊万里大河内山」の会館も、伊万里焼を深く知るために訪れるべきスポットです。

大河内山の製品の購入はもちろん可能ですが、注目すべきは伊万里焼の食器を使ったカフェ。

ビーフカレーやチャーハン、さらにはカップに注がれたコーヒーなどを伊万里焼の食器で楽しめます。

伊万里・有田焼伝統産業会館

1977年に国の伝統工芸品に指定されたことをきっかけに、伊万里焼、そして有田焼の振興を目的としてつくられたのが「伊万里・有田焼伝統産業会館」です。

館内では各種資料の保存、公開、さらには後継者の育成を行っており、伊万里焼の今後を担う、重要な施設です。

まとめ

国の伝統工芸品にも指定されている伊万里焼は、日本で最初の磁器として深い歴史を持っています。

大胆なデザインと薄く硬い機能性は世界中から注目を集めており、今後、クリエイターとのコラボレーションや品質の追求により、さらに魅力的なプロダクトになることに疑いはありません。

伊万里焼がどんな場所で、どのように、どんな人に作られているのか、実際に日本に訪れて確かめてみてください。

Writer

北海道から沖縄まで、国内各地のリアルな観光情報を発信中。
穴場スポットやアクティビティをはじめ、その土地の文化・歴史・グルメなどの魅力を、地元ライターならではの視点でお伝えします。

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